堕落ディザイアー

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Web漫画 『とあるフリーターの日常』 が生々しくて面白い

ペイント漫画保管庫

 

こちらのサイトで連載されてるWeb漫画『とあるフリーターの日常』が独特で面白いです。

 

そのタイトル通り一人のフリーター男の日常生活を描き続ける漫画ですが、途中で選択肢が表れるのが新しいです。読者の選択で主人公の行動が変わって、バッドエンドを迎えたりその後の人生のルートが変わったりします。そしてルートが変わるごとに「とある◯◯の日常」と別漫画として話が進みます。

 

どのルートでも、怠け癖があるけど根は真面目な主人公が色々なことに挑戦して成功したり失敗したり途中で投げ出したりしながら人生を歩んでいきます。メインストーリーの「とあるフリーターの日常」は今でも更新が続いていて、主人公の一歩ずつの地道な人生がまだ続いてます。

 

 

 

最初はニートの主人公が決心してアルバイトに応募するというところから始まります。ニートとして初登場時の主人公(仁井 透=にい とおる、というそのままな名前です)の思考のクズっぷりが妙にリアルです。妄想だけの自信に溢れて社会を舐め腐ってるところがいかにもな悪いタイプのニートで丁度よくイライラさせられます。

 

そしてそんな中でもちらほら前向きで真面目な性格が見え隠れするのも良いです。たくさんの悪いところとほんの少しの良いところのバランスが読者に決定的にまでは嫌われないギリギリのラインを攻めてきます。

 

 

 

そんな主人公・透が選んだ「ゲームのデバッカー(テストプレイでバグを探すアルバイト)」という仕事に就いて少しずつ精神的に鍛えられ、成長していく様子がやたらとリアルで生々しくてハマります。

 

主人公の透も彼を取り巻く仕事仲間や友人・家族も皆とにかく人間臭くて、彼らの行動の行く末が気になって一気に読んでしまいます。エンタメとしての漫画ではなく本当に一人の人生の記録を追ってるような生々しい展開が個性的です。作者の実話じゃねえのこれ、と思ったりします。

 

透の一つ一つの行動や思考が人間的で「わかるわかる」と感情移入してしまいます。バイトで実績を出して舞い上がったりちょっとしたことで落ち込んでバイト自体投げ出そうとしたり、でもまたちょっとしたことで気を持ち直して出勤したり。副収入を得ようとサイドビジネス的なことを始めたと思ったら普通に飽きて辞めたり。

 

透の周りの人たちとのやり取りもまた人間臭くてそれが妙に魅力的だったりします。意味深な言動を意味もなくやる奴や改心しかけて結局変わらない不良とか、漫画的に考えれば盛り上がりのために変化がある場面で「でも現実はこんなもんだよね」とでも言うように何のイベントもないまま終わる場面も多いです。

 

日常の中での出来事についても、明らかにまずいことが起こるフラグから何も起きなかったりいい変化が起こりそうで特に起きなかったりと「漫画じゃないんだからそう都合良く色々あるわけないでしょ」と言わんばかりの展開の連続です。そういった細かい現実臭い描写が漫画としては異質だしリアリティがあります。

 

 

 

透が資格を取ろうとしたり副業を始めようとして怪しい情報商材に手を出したり動画投稿してみたりと、いわゆる「ダメ人間」とされる人たちがやりそうな人生逆転チャレンジを一通り試すところが共感できます。自分もダメ人間だから透の思考や心理がやたらと理解できます。意識高いし実行に移す第一歩くらいまでは行ける行動力もあるけどとにかく継続する辛抱強さが無いところが正に「真面目系クズ」です。

 

メインストーリーでの透のバイト「デバッカー」の描写が細かくて奥が深いところも地味に見所の一つです。そういう仕事があるということは知っていましたが、「素早く的確にあらゆるバグを見つけて、発生状況からその原因を突き止める」という業務はとても「ゲームするだけの楽なバイト」とは言えません。最初はそういう認識で入社した透が苦労するところも少しずつ経験を重ねてセンスを磨いていくのもリアルです。ここらへんの細かい描写は作者の実体験も入ってそう。

 

 

 

徹底して現実的な描写や展開は読んでいて引き込まれる一方で、自分の悪い部分と重なって妙に辛くなったりします。犯罪者ルートなんかは普通に鬱漫画といっていいレベルでどんよりした気持ちになります。

 

サイドストーリーはどれも大体完結していますが、デバッカーフリーターとしての透の人生はまだまだ続いているのでこれからどんな展開でどんな結末になるのか楽しみです。

今までの人生を思わず振り返りました 『ミスター・ノーバディ』 感想

ミスター・ノーバディ(字幕版)

 

2009年のフランス・ドイツ・カナダ・ベルギー合作の作品です。ジャンル分けが難しいです。ファンタジーとも人間ドラマともSFともミステリーともとれます。どの要素も含んでます。

 

久しぶりに引き込まれて離れられないような映画を見ました。圧倒的な映像世界とストーリーでした。

 

 

 

トーリーは「一人の男の何パターンもの人生を追った物語」です。科学の発展で人類皆が永遠に生きられるようになった2092年に、寿命で死ぬことを選んだ最後の人類である主人公・ニモが死に際に語る回想が描かれます。その回想はいくつもの人生のパターンが複雑に絡み合ったもので、時系列も前後しながら話は進みます。

 

離婚する両親のどちらについていくか、という9歳の時の究極の選択からニモの人生は幾通りに分かれていきます。誰と結婚するか、ある日の会話に何と答えるか、店でどの商品を買うか……といった大小様々な選択から更に枝分かれが進みます。本当に愛する人と結ばれる人生も妥協のように他の人を選んだ人生も、逆に最愛の相手ではない自分が選ばれた人生もあり、悲劇に見舞われる人生もあり、その悲劇を乗り越えた先に別の困難が待ってる人生もあります。選択によってニモの生きる状況も様々です。

 

そんな幾通りもの人生が展開されて、色々なことがはっきりと結論づけられないまま終わる映画です。解釈も人それぞれだと思うし実際ネット上の感想では多様な考えが溢れてます。

 

 

 

抽象的でシュールでアート的な表現も多くあって、その一方でバタフライ効果超ひも理論なんかの時間軸系SFでおなじみのワードも出てきます。理論的な正解なんて最初から決められてないような芸術作品にも思えるし、繰り返し見て解釈を固めていくハードSFにも見えます。一人の男の人生を追う感動ものの人間ドラマとして見ても面白いです。明確な答えはもらえないのに見終わった後は不思議なカタルシスに包まれます。そしてもう一度見たいと思わされます。

 

作品全体としての解釈を考えるのも面白いし、いくつものパターンで展開されるニモのドラマ自体もそれぞれ面白いです。個人的には作品の前半、ニモの青春時代の話が一番好きです。ニモの青春時代も彼の選択でいくつもパターンがありますが、その中の一つでヒロインを演じたジュノー・テンプルという女優がとにかく可愛かった。「初恋の甘酸っぱさ」が生きて歩いてるような女の子でした。ジェニファー・ローレンスみたいな不思議な色気があります。

 

少年時代のニモを演じたトビー・レグボも繊細で内気でミステリアスな雰囲気が良かったです。主演(大人のニモ)のジャレッド・レトより好きでした。女の子みたいにきれいだし。ずるい。

 

 

 

色々な選択が作用して大きく様変わりするニモの人生を見ていると、やっぱり自分でも過去を振り返って今までの選択のことを考えてしまいます。誰もがそうだと思うし、僕もいくつか「もしあの時こっちを選んでたら今どうなってたのかな」と思う場面があります。正解だったと思う選択も後悔が残る選択もあります。これからもそういう場面に出くわすだろうし、それが楽しみにも面倒くさくも思えました。全部分かってたら楽なのに、とも感じるし、だからといってこの先の人生のパターン全てが見えてしまったらどんなハッピーエンドが待っていたとしても絶望するような気がします。楽しくなくなりそう。

 

作中では原因と結果の因果についてや時間・次元について難しい用語や理論が語られます。理解しようと考えながら観てはいたものの自分の知識不足で理解できなかった部分も間違って考えた部分も多いと思います。色々な考え方が次々に展開されて、未来には無限の選択肢が広がってるようにも、自分の行動で未来に影響を及ぼせるなんておこがましいとも思わされました。

  

 

 

小さな因果で未来が変わるバタフライ効果を扱う映画ということで名作SFの『バタフライ・エフェクト』が連想されたし、つながりのある複数の物語が入り交じって展開する作風は『クラウド・アトラス』を思い出しました。SFチックなファンタジーが好きな人なら話にがっつりハマれるだろうし、夢の中を覗き見てるような不思議な映像世界は見ていて飽きないし綺麗だとさえ思いました。

 

情報量も構成も凄い話なのでとても一回観ただけでは物足りません。もう一度観たらもっと気づけることが多いだろうな、と思います。ただ観終わったすぐはけっこう疲れます。濃いし長いし。

 

物語としても相当面白かったし、もう一度観たいと思える映画は久しぶりです。濃厚で疲れる映画だけど絶対にまた観ないと。次はいつ観よう。メモを用意して観たいです。

 

あとジュノー・テンプルがとにかく可愛い。この子だけのために観る価値がある。以上。

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