堕落ディザイアー

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アート的な映像の世界観が良かったです 『ギヴァー 記憶を注ぐ者』感想

ギヴァー 記憶を注ぐ者(字幕版)

 

2014年のSF映画です。小粒ながら不思議な映像美が素敵な映画でした。

 

主演の若手俳優レントン・スウェイツは『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』でジャック・スパロウの相棒役に決まっている期待の新人だそうです。

他にもアカデミー賞受賞経験のあるメリル・ストリープジェフ・ブリッジスが脇を固めてテイラー・スウィフトがゲスト出演というよく見ると豪華なキャストでした。

 

 

 

トーリーは近未来のディストピアものです。

 

現代で大きな戦争が起きた後らしい世界で、徹底的な管理社会となった街が舞台となります。画一的な住居が並び、住民たちは定期的な投薬で感情を抑えられています。更には過去の歴史に関する記憶が一切排除されていて、人々は誰も管理社会以前の世界について知りません。

 

出産も人工的に管理され(出産母という専門職が置かれている)、家族ですら血縁関係のない成人男女と子どもたちで構成されています。職業も適正によって振り分けられ、一定の年齢になった老人を安楽死で排除する制度まであるらしい描写もあります。そしてその「死」という概念まで人々の記憶から消されています。

 

徹底的に管理されて自由を奪われる代わりに平和と平等を実現した社会です。『ダイバージェント』『リベリオン』『ガタカ』なんかの有名SF映画で既視感がある設定もありますが、原作小説が1993年発表のこちらの方がオリジナルなのかもしれません。 

 

 

  

何の予備知識もなく見たので、まず冒頭で全てがモノクロで映し出されて驚かされました。平等な管理社会のために色彩の記憶まで排除されているということが後に語られますが、味気なく面白みのない世界を象徴しているような演出で面白いです。この表現でまず一気に引き込まれました。

 

とにかく徹底的に作り込まれた映像美、世界観が一番の見所です。同じ形で並ぶ真っ白な建物、年齢や性別や職業で分けられたお揃いの服、幾何学的に整備された街の俯瞰映像。全てが綺麗で清潔で緑も豊かなのに、全てが嘘くさくて人工的で無味無臭です。

 

 そんな中で主人公の少年ジョナスはこの管理社会に仄かな疑問を持って暮らしています。小さな違和感のようなものを抱えながら周りには言えずに、もうすぐ生涯の職業を言い渡される儀式を待つ大人間近の年齢です。

 

ジョナスの異質さは社会の管理者たちに見出されていたのか、彼が言い渡された仕事は「記憶の器(レシーヴァー)」というもの。社会で一人しかいない特殊で重要な職業です。その内容は、「社会でただ一人過去の記憶を引き継いでその身に抱え、その知識を以て社会のアドバイザーとなる」というものでした。

 

「人々皆が過去の記憶をなくせば戦争も欲も知らないまま平和に暮らせる」という発想に加えて、「一人だけ人類の過去を知るものを置いて人類のブレーキ役を務めさせる」という仕組みみたいです。確かに有効そうな方法である一方、そのブレーキ役に選ばれる人の負担は尋常ではないという明確な欠点もあります。

 

実際、ジョナスが師事することになるレシーヴァーの老人(彼が自称する「ギヴァー:GIVER」がタイトルになってます)も、一人で人類の歴史を抱える重圧で疲れきった様子でした。

 

 

 

ちなみに記憶の受け継ぎ方は「お互い手を重ねて脳内に直接注ぎ込む」というアグレッシブなものです。原理不明ですがなんともショックが強そうな方法でした。

 

ジョナスが日に日に記憶を注がれ、平和や平等と引き換えに人類が失った「自由」の美しさ・楽しさを知っていくほどに映像が色づいていくのは綺麗でした。更に、表面上はそう悪くないものに見えた管理社会の歪で暗い一面がどんどん露になっていくのは何とも言えない不快感がありました。

 

特に、作中で役目済ましに多用される「謝罪します」「謝罪を受け入れます」という形式だけの礼儀文句の気持ち悪さは印象的です。建前を重んじる表面的な礼儀正しさは日本のコミュニケーションにも一部通じるところがあって特に際立って見えたのかもしれません。

 

 

 終盤の展開は説明不足感が否めない部分もありましたが、あえて抽象的な終わり方にしてアート作品寄りにしているのか尺の都合上いくらか展開を省いたのかは原作未読なので分かりません。が、個人的には別に悪くない終わり方だと思います。

 

決して評価が高い作品ではないみたいですが、凝った映像表現をはじめ作り込まれた世界観は個人的には大好きでした。

 

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