堕落ディザイアー

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退廃的で渋いかっこよさに満ちています 『ザ・ウォーカー』 感想

ザ・ウォーカー(字幕版)

 

2010年のSFアクション映画です。核戦争後の荒れたアメリカで、ある一冊の本を運ぶ男の旅を描いています。いわゆる「文明崩壊もの」というやつで、北斗の拳やマッドマックスみたいなバイクに乗った暴徒がヒャッハーしてるような暴力の世界が舞台です。

 

主演はアカデミー俳優のデンゼル・ワシントンです。荒廃したアメリカを東から西へとひたすら歩いて旅する男です。その目的は1冊の「本」を「あるべき場所」へ運ぶことで、その本には世界を変えるほどの力があるんだとか。焚書でほとんどが失われ、彼が持っているのがこの世で最後の1冊かもしれないほどの貴重なものです。

 

彼が旅の途中に通った街で敵として立ちはだかる男を演じるのは名優ゲイリー・オールドマンです。細身の狂ったオヤジを演じさせたら右に出るものはいない名悪役ですが、今回も暴徒をまとめあげて街一つを作り上げ支配する狂気のカリスマ性が敵ながら魅力的です。彼も主人公同様にその「本」の力を知っていて、自分の支配力をもっと高めようと本を執拗に狙ってきます。

 

 

 

そんな凄い力を持った本って一体なんやねん、という話ですが、主人公の言動にヒントが多いので終盤のネタばらしの前に気づく人もいたでしょう。製作者も多分隠すつもりはなかったんだと思います。西欧と文化の違う日本ではピンとこなくて大げさに感じる人も多いと思いますが、向こうではこのストーリーをすんなり受け入れられるくらいやっぱり影響力が大きいものなんでしょう。思いっきり◯◯映画ですね。

 

とはいえ文化の違う僕たちでもサバイバルアクションものとして申し分なく楽しめる内容になっています。それこそ北斗の拳やマッドマックス的な文明崩壊後の世界が渋くクールに描かれます。退廃的で暴力的で汚れた世界観の作り込みは一周回って綺麗です。

 

良い人も悪い人も皆ちょっとどこか狂ってて、でももう社会が狂ってるから逆に皆正常、みたいな世界です。そんな中で礼儀や理性を保って生きている主人公の異質さが際立ちます。これも本の力なんでしょうか。それほど向こうでは「人間らしさ」の根幹に根づいてる大きな考え方なんでしょうね。

 

 

 

盗賊じみた輩がゴロゴロいたりなんとか再建された街を支配するのがギャングじみた荒くれ者集団だったりとにかく主人公の前に立ちはだかる敵が多いので、暴力描写も容赦ありません。1対多数で囲まれる度に主人公がスマートに手際よく銃や鉈を振り回して、悪党は首が飛んだり腕が切り落とされたり喉を矢で貫かれたり気の毒なやられっぷりです。

 

とはいえ退廃的な空気感を形作る彩度の低い色味のない画面のおかげで、ショッキングさはあまりありません。淡々とあっさりとした描写のおかげでそこまでグロいとは感じませんでした。

 

 

 

サバイバル映画、バイオレンスアクションとしての一面もある一方で、ロードムービー的な要素もあります。暴力的で息苦しい街を逃げ出して主人公についていこうとする無鉄砲な少女が最後に見せた成長との落差が良かったです。ここにもやっぱり本の力が関連づけられてるように見えます。

 

 

 

退廃的な雰囲気の映画が好きな方、スタイリッシュアクションが好きな方は楽しめると思います。結末のカタルシスで余韻が残る良い映画です。

 

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