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英雄潭のその後 『ハドソン川の奇跡』 感想

ハドソン川の奇跡(字幕版)

 

2016年のドラマ映画です。実際にあった飛行機事故とその後の物語を描いています。

 

アメリカの旅客機が両エンジンが止まる非常事態に陥ったにもかかわらず、ハドソン川に着水して乗客乗員全員が生還という奇跡に近い事故でした。当時ニュースで話題になったので覚えている方も多いと思います。

 

USエアウェイズ1549便不時着水事故 - Wikipedia

 

長年の勘から空港まで飛行機がもたないと判断したサレンバーガー機長は咄嗟に近くのハドソン川に不時着水することを決断し、結果的に乗客乗員を救った英雄としてメディアに取り上げられました。この映画ではその機長を主人公に据え、緊迫の事故とその後の事故処理での彼の苦悩を描いています。

 

 

 

機長を演じるのは名優トム・ハンクスです。寡黙で生真面目で落ち着いた人柄の機長役は普段の彼とはまた違った味わいがありました。終盤の実際の映像で出てくるサレンバーガー機長と雰囲気がそっくりで作り込まれた演技の凄さに驚きます。

 

副操縦士を演じたアーロン・エッカートもいい味出してました。「ダークナイト」「エンド・オブ・ホワイトハウス」などアクション映画を中心に知られる実力派です。ピンチの時や重い空気の中でも冷静に行動して場を和ませる男ってかっこいいです。

 

 

 

作中では事故当時やその後の事故調査、それを取り巻く周囲の目やその中での機長の心情が時系列を混ぜて描かれます。報道で事故を見ていた僕たちは「乗客乗員全員が無事。機長の咄嗟の判断で全員が救われた。」というめでたしめでたしの英雄潭としてしかこの話を知りませんが、あくまで本作ではその後の出来事がメインの話になります。

 

こういった重大事故の後には徹底した調査が行われるそうです。専門の調査組織もあります。飛行機の残骸から状況を再現してシミュレーションし、管制との通信記録を精査し、パイロットの行動や判断・その根拠・更には当日の健康状態や精神状態まで根掘り葉掘り質問します。夫婦仲まで聞かれるみたいです。

 

世間では英雄として取り上げられ、街に出ても酒場に行っても宿泊先のホテルでも褒め称えられて握手を求められ、その一方で調査では徹底的に責任を追及されます。調査委員会もそれが仕事なので仕方ありませんが、基本パイロットに落ち度があると決めつけた前提で取り調べが行われるのは見ていてこっちも辛いし息苦しいです。

 

 

 

着水後の脱出ではギリギリまで機内に人が残っていないか確認し、連日「もし判断を間違えて市街地に墜落していたら」という悪夢や幻覚に悩まされる様子に機長の生真面目で責任感の強い繊細な人柄が見えました。報道されるような特別な英雄ではなく、事故の記憶やプレッシャーに悩まされる普通の人間として描写されてます。

 

そういった徹底した心理描写に加えて出来る限り忠実に再現された事故シーンが合わさって、映画的なスペクタクルとは違ったリアリティある重苦しい緊迫感が作中に漂っています。大勢の関係者を集めた事故シュミレーションの場面は事故シーンに負けない緊張感で、乗客乗員全員が救われた後も事故は終わっていないと思い知らされます。

 

 

 

事故シーンや重苦しい公開調査のシーンはそれぞれ別のベクトルで緊迫感があって(何せ実際の出来事なのでリアリティが半端じゃないです)、それが時系列を混ぜられて上手く退屈しないような作りになってます。人間ドラマとしても飛行機パニックとしても面白い映画でした。

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