堕落ディザイアー

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生死を分ける数分 『THE WAVE/ザ・ウェイブ』感想

THE WAVE/ザ・ウェイブ(字幕版)

 

ノルウェーの災害パニック映画です。起伏の激しい山岳地帯の隙間にある小さな町を舞台に、巨大津波の恐怖を描いています。

 

ノルウェー映画を見た事はほとんどなかったし、ましてやノルウェー産パニック映画なんて初めて見ました。非現実的な派手さを追求するのではなく、起こり得る自然災害としての津波描写は息のつまる緊迫感でした。沖から迫ってくる数百mの津波が都市を飲み込むようなハリウッド映画とはまた違った、現実的でリアルな津波の様が恐ろしかったです。

 

 

 

山の多い国だからでしょうか、実際にこの映画のような「渓谷で山肌が崩れて海に流れ込み、山々の隙間を縫うように津波が発生して走ってくる」という災害は珍しい事ではないみたいです。冒頭で過去の実際の津波被害の映像が流れるのが印象的でした。

 

そんな環境もあってか、突拍子もなくある日突然大災害が発生する大作パニックと違って淡々と予兆が表れ、ある時それが沸点を超えて脅威になる様がまるでシュミレーションを見ているかのように丁寧に描かれます。

 

常に山の地質の観測チームが置かれていて事前に予兆を掴んでいる点もリアルでした。そしてその観測チームですら「もう数十年被害はなかったのにまさか今日そんなことが起こるわけ……」と油断が生まれているのもまた現実的です。忘れた頃に巨大地震が起こる地震大国日本に暮らす身としては、決して人ごととは思えない描写でした。

 

 

 

そして津波の前兆ともなる岩山の崩落、それに伴う地震が起きてからの「津波到達まであと10分」という明確なタイムリミットが示されるのは斬新でした。

 

早く家を出なければ、なるべく高い所に走らなければ、財産を捨てて荷物を捨てて車を捨てて走ってでも高台に逃げなければ、あと5分、あと3分、あと1分、もうすぐ後ろまで津波が迫ってきている……という徐々にタイムリミットが近付いてくる恐怖が実感できる演出でした。このワンアイデアの効果で他の災害映画と差がついているといってもいい描写方法です。

 

いくら災害予知の技術を発展させて防災設備やマニュアルを整えても、最後には生き残るために自分の足で、我が子を抱えて走らないといけないんだよなあ、と当たり前ですが人間も生き物のうちであることを思い出しました。リアル指向の映画だからこそ、自然災害はどこか遠くの話ではなく今日我が身に起こってもおかしくない現実だと突きつけられます。

 

 

 

津波がくるまでの描写は徹底したリアリティと展開の見せ方で災害映画の中でも頭一つ抜きでた迫力を見せてくれた本作ですが、登場人物達のストーリーは王道というかシンプルというか、言ってしまえば「ありがち」なお話でした。

 

津波に襲われて散り散りになった家族を救って無事に再会を果たす〜というよくある物語。家族構成が違うだけで大筋は『カリフォルニア・ダウン』です。というか災害パニック映画なんて家族の絆以外がテーマになることはほとんどありませんが、重要なのはパニックの描写でストーリーは普通に見れて普通に盛り上がればそれで良しなんですよね。

 

 

 

というわけでこの『THE WAVE/ザ・ウェイブ』、シンプルなストーリーを軸にして潔く津波描写の一点に全力を注いだような秀作パニック映画でした。とにかく見ているこっちまでそわそわするような津波到来までのリミットの描写が秀逸です。映像も安っぽさは全くなく、ハリウッド映画にも引けをとりません。そういう点でのリアリティも申し分ないです。

 

自然の怖さを忘れないためにもこういう映画は必要だと思います。

 

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