堕落ディザイアー

映画ブログ/音楽ブログ/音楽活動報告ブログです 好きなカテゴリでお楽しみください

かつてE.T.を見ていた子どもたちへ 『モンスタートラック』感想(※一部ネタバレ)

モンスタートラック(字幕版)

 

2016年のモンスターコメディ?映画です。ほっこりアットホームなファミリー向け映画でした。

 

田舎町の石油採掘所の地下、油田から飛び出してきた数匹の未知のモンスター。もし新種の生物が地下にいることが分かったら環境保護のために採掘を禁じられてしまいます。それを恐れた石油会社は事実を隠そうとし、モンスターの捕獲に乗り出します。

 

そんな捕獲網を逃れた1匹のモンスターは町中に逃れ、一人の青年と出会います。青年のトラックのボディ内部に棲みついて彼にすっかり懐いてしまったモンスターを追っ手から逃がして故郷に返してやるため、青年とその友達、家族まで巻き込んだ大騒動が始まる……という物語です。

 

 

 

「不思議な生き物と出会う子どもたち/自分たちの都合でそこへ介入してくる大人たち」という構図は『E.T.』から続くこの手の映画の定番のプロットです。この『モンスタートラック』にもそんなE.T.のテーマやワクワク感・冒険感が受け継がれています。

 

本作での未知のモンスターは「クリーチ」と名づけられた地底からの迷子です。この映画が他のモンスター交流映画と大きく違うのは、このクリーチがタコとサンショウウオを合体したような触手だらけのヌルヌルの見た目に、人間より大きな図体をしているという点でしょう。大抵のこの手の映画では人間と交流しやすいサイズ・体格のキャラクターが登場することが多い中、こいつは人間なんて簡単に頭から丸呑みしてしまいそうな見た目をしています。

 

しかしこのクリーチがいざ出てくるとこれがもう可愛いのなんの。油田で暮らしているだけあって彼らの食べ物は石油なんですが、まるで哺乳瓶のようにドラム缶を抱えてゴッキュゴキュ石油を飲み干す様は巨大な赤ちゃんパンダ(ただし触手ヌルヌル)でも見ているようで愛らしいです。

 

主人公の青年トリップはそんなクリーチを最初は面倒臭そうに追っ払おうとするのですが、放っておけない無邪気な彼(彼女?)を見ているうちにだんだんと愛着を感じてしまいます。しまいにはクリーチが棲みついたトラックの車体を彼が居心地よく移動できるように改造してやるほど。

 

 

 

しかしそんな彼らの心温まる交流がいつまでもは続いてくれないのもこの手の映画のお約束です。必ず彼らを邪魔する大人達が現れます。本作でそんな憎い敵役になるのは石油会社の荒事担当チーム。大型トラックでしつこくトリップとクリーチを付け回します。クリーチを追うことで民間人の子どもであるトリップに危険が及ぶことすら全く厭わない非情な集団です。

 

人間の都合で自由を奪われたり実験道具にされるモンスターを「かわいそう」というシンプルな気持ちで守ろうとするのはいつでも子どもたちです。それはE.T.の頃から変わりません。その一方で大人たちはいつの間にか自分たちが生き物の中で頂点のように振る舞うことに慣れて、違う世界で暮らしている生き物にも当たり前のように手を伸ばして自分たちの都合に巻き込もうとします。

 

E.T.』を初めて見た子どもたちも今はもう大人です。E.T.をかばい隠そうとする立場にいた子どもたちは、皆今ではクリーチを追う石油会社の大人たちの年齢であり、トリップを信じようとしなかった母親の恋人の年齢であり、会社の都合に屈してクリーチを息子ごと売ろうとしたトリップの実父の年齢です。

 

 

 

ある意味でそれは仕方のないことで、大人が中心に回す世界の中で大人として生きている以上普段は大人として振る舞い、ときに子どもに非情に見られることも避けられないのかもしれません。

 

それでも僕たちが「いい大人」「悪い大人」という区分をされるとき、その境にあるのは「子どもを守り、子どもの味方をするか否か」という線引きなのではないでしょうか。

 

トリップの母親の今の恋人である保安官は最後に、義理の息子的な存在のトリップの味方をします。別に子どもたちのようにクリーチに愛着を感じたわけではなく、ただ石油会社のハンターに追いかけられ危険な目に遭っているトリップを自分が守らなければ、という使命感から動きます。

 

E.T.を見て育ち、大人になった僕たちは今、E.T.を捕らえようと走り回った政府職員とE.T.や子どもたちのために走った母親や科学者のどちらの立場になっているでしょうか。意地悪で利己的な大人になっていないでしょうか。

 

 

 

『モンスタートラック』は子どもと一緒に家族で観られるような賑やかでほのぼのしたコメディ映画ですが、大人になった今の視点から観ることのできる『E.T.』的映画だということも意識してみると面白いかもしれません。

www.youtube.com