堕落ディザイアー

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ダニエル・ラドクリフの真骨頂 『アンダーカバー』感想

アンダーカバー(字幕版)

 

2016年のアメリカのサスペンス映画です。あの『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフ主演。今回彼は白人至上主義の過激派団体に潜入するFBI捜査官という、魔法使いの少年と比べるととんでもない落差のある役柄を演じています。

 

最初こそまだまだ幼さの残る坊ちゃんらしい容貌だったラドクリフですが、テロ行為をも辞さない人種差別団体への潜入捜査に挑むために頭を丸刈りにするといかつくてヤンキーな雰囲気が出てきます。

 

内容は王道の潜入ものらしく、捜査官であることがバレそうになってヒヤッとしたりなんとかそれを切り抜けたりといったピンチが度々訪れ、それが静かに淡々と進む映画のいいアクセントになっています。

 

派手さはありませんが、本来いるはずのない組織の中で本来関わるはずのない人々に囲まれている居心地の悪さは中々の気持ち悪さでじわじわと息が詰まってきます。

 

 

 

そしてそんな作品を通して描かれるのは、「一人の人間」としての様々な差別主義者たちです。

 

その思想への入口もまた様々で、白人文化圏の外の治安や経済を見て自分の子どもたちには白人文化こそを残したいという思考に至った人や、少数派人種の就職や福祉を優先するようなある種の「逆差別」への反動から差別主義になった人、ユダヤ系経済圏に支配されている世界を解放しようと思っている人など皆それぞれの考えを持っています。そして彼らも一枚岩ではなく、時には対立したりどちらの思想がより尊いかで見下しあったりもしています。

 

そしてまた彼らも愛する家族がいたり、仲間を思いやる気持ちがあったりとあくまで一人の人間らしい一面がいくつもあります。その過激な思想も「自分の行ないこそが本当に世界をより良いものにする」と本気で信じているからこその行動です。ある意味では彼らは世界の進歩のために積極的に行動を起こそうとしているタイプの人たちで、彼らの思想・コミュニティの中では「立派で行動的な人」ですらあるわけです。

 

何故彼らが差別主義に至ってしまったかというとそこにはもっともらしいというか、一応は理屈が通って聞こえる理由がそれぞれにあり、ある意味では彼らも昔からある差別的思想の巧みな言葉に絡みとられてしまっただけにも見えます。

 

作中で「初めに言葉ありき」という一節が多用されているように、「思想」や「正義」といったものは多感な時期にどの側面から世界を見ている言葉に影響を受けたかによって大きく左右されるものなのかな、と思わされました。その思想の言葉を妄信的に信じて突き進んで、その結果差別主義の視点から世界を見て正義を判断して行動する人々が生まれるのでしょうね。

 

 

 

過激なテロリストを生むのはまず最初に「被害者意識」だという言葉が一番印象的でした。自分たちは不当に扱われている被害者であり、そんな現状を覆すためにこそ行動を起こそうとする。そんな自分は正義であり英雄である……みたいな考えでしょうか。

 

そんな過激な人々に潜入捜査という形ではありますが近づき、交流し、その思想を理解すらしながら仕事として彼らを止めようとする捜査官。そんな難しい役どころを器用に演じるダニエル・ラドクリフの真骨頂を見た気がします。ハリー・ポッターのイメージからの脱却に悩み苦戦している印象の彼ですが、あれほどカメレオン俳優としての技量を見せる事ができるならきっと大丈夫でしょう。きっとこれから演技派としての地位を確立していってくれるはずです。

 

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