堕落ディザイアー

映画ブログ/音楽ブログ/音楽活動報告ブログです 好きなカテゴリでお楽しみください

両足からマグマにダイブ 『ボルケーノ』感想

ボルケーノ (字幕版)

90年代後半は名作パニック映画が多いですね。『インディペンデンス・デイ』『アルマゲドン』『ツイスター』『ディープ・インパクト』等々……

 

『ボルケーノ』はそんな有名大作がひしめく時代において、それらと比べるとちょっと地味ながら「火山パニック映画」というマイナージャンルで希少な立ち位置を占める映画です。

 

 

 

主人公はトミー・リー・ジョーンズ。BOSSのCMでコーヒー飲む宇宙人をやっていたおじさんです。

 

本作での彼の仕事は緊急事態管理局という、主に災害などに立ち向かうと思われるお役所の局長です。ロスのど真ん中で地面の下からにょきにょきと表れる火山に立ち向かうことになります。

この荒唐無稽なシチュエーションは科学的視点からもかなり渋い顔をされたみたいです。しかし超音速で飛ぶ彗星にブルース・ウィリスが着陸してドリルで穴をあけ、核爆弾を埋め込むような映画が名作になれるのがパニック映画の世界です。科学的な正しさなんて面白さの前には無意味。盛り上がることがこの世界の正義です。ロサンゼルスのど真ん中に火山。けっこうじゃないですか。面白そうじゃないですか。

 

 

 

さて、災害をテーマにしたパニック映画は多々あれど、題材にされるのは津波、ハリケーン地震などが多いですね。そんな中で火山ものはあまり大作が作られることは少ないように思えます。これ以外だと『ダンデズ・ピーク』くらいか。近年は『ポンペイ』なんていう火山パニック+グラディエーターな映画もありましたが。

 

なんで火山ものってこんな人気ないんだろうか。この作品が同時期の他ジャンルのパニック映画と比べて何が違うのか。それは「清々しさ」の有無ではないかと思えます。なんというか、火山もの・炎災害ものの宿命なのか、人の死に方がエグいです。

 

災害での人の死に方にエグいも爽やかもないと思いますが、基本的に災害パニック映画で人の死という要素は自然による破壊描写の中の1アイコンとして使われます。娯楽映画として作られるパニック映画ですから、主要人物以外の人の死は、その人の背景などは描かれずあっさりと、映像的に派手さを追求した描写の一つとして描かれます。

 

そして派手なものを見て刺激を受けたい僕たち観客は、人が派手に死ぬシーンでも不謹慎ながら「おお~すげえ~」と驚いたり興奮したり手に汗握るわけです。ではないでしょうか。

 

基本的に映画の背景で死んでいく人たちは、壊れる建物や爆発する車なんかと同じ扱いをされるわけです。現実のようにぐちゃぐちゃになって死ぬ描写はなく、津波に飲み込まれていったり竜巻に飲み込まれていったり建物の倒壊に飲み込まれていったりするわけです。中には吹っ飛ばされる車や倒れるビルの中にいて直接は描かれない犠牲者もたくさんいることでしょう。

 

 

 

一方でこの『ボルケーノ』はどうか。

 

今回迫ってくる主な脅威は、火山弾、地震、そして溶岩です。そのうち地震は序盤一発のみでメインの災害ではありません。火山弾も火山活動発生直後に飛び交うくらいで出番は終わります。

 

そう、この映画で人間のメインの敵になるのは、人の早歩き程度の速さでじわじわと迫ってくる超高温の溶岩なのです。

 

さあ、この溶岩に襲われて、人が一発で派手にどかんと死んでいく様が想像できますか。できません。案の定映画の中でも犠牲者は「熱い、熱い、熱いいいい!!助けてくれえええぎゃああああああああ!!!」「熱い、熱いわ!!お願い助けてああああああああ!!!!」などと叫びながら死んでいきます。

 

とてもじゃないですが娯楽映画として爽快感を持っては見れません。生々しい死に方を見せつけられてむしろトラウマを植え付けられそうです。

 

特にこの映画屈指のトラウマシーンが、地下で立ち往生した地下鉄から人々を救出するシーンでしょう。地下鉄を取り囲むように溢れる溶岩を飛び越えようとしたおじさんが、跳躍距離が足りずに両足から溶岩ど真ん中に着地、そして担いでいた要救助者を死に際の根性で溶岩の向こう側に投げて助けると自分はじわじわと「溶けて」溶岩の中に沈んでいきます。うへえ。

 

 

 

そんなわけで本作は娯楽パニックムービーに必要な爽やかさがないんです。むしろ鑑賞後も色々と思い出してず~んとなりそうなシーンが多い。これも本作と、同期の有名パニック大作たちとの差を生んだ一因ではないでしょうか。

 

あとは、スケールがちょっと小さく見えるのも地味な作品になった要因ではないでしょうか。『アルマゲドン』『ディープ・インパクト』らへんが世界全体を巻き込んだ話だったのに対し、本作はロサンゼルスという街の一部の地域が舞台のメインです。夜に住宅街やビル街の街角で溶岩の流れを止めようと苦戦する様は確かに手に汗握る緊迫感があるんですが、明るい中で広い範囲に隕石が降って街をぶっこわしたり、竜巻が発生したりする方が絵的にはよほど派手です。

 

 

 

映画としては普通に面白いですし珍しい火山もの大作として貴重な作品なんですが、誰もが知る有名作品になり得なかったのには条件の不利さが重なった結果でしょうか。そんな映画です。