堕落ディザイアー

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ハリウッドPOVホラーの王様 『クローバーフィールド/HAKAISHA』感想

クローバーフィールド/HAKAISHA (字幕版)

 

ニューヨークのマンハッタンに突如現れた謎の巨大生物が街を蹂躙する中、その真下を逃げ惑う市民の逃亡劇を手持ちカメラの視点から描いたモキュメンタリー(ドキュメンタリー風に作られたフィクション)作品です。

POV(Point Of View)という、一人称視点で撮影する手法をとっています。

 

公開は2008年。今でこそPOVホラーは一大ブームになって珍しいものではなくなっていますが、この映画の公開はまだPOVというジャンルすらなかった時代ですね。そんな時代に当時としてはかなり実験的なプロモーション・内容で製作され、その結果興行的にも批評的にも大成功を収めたチャレンジングな作品です。

 

撮影手法以外にもその宣伝方法も徹底したフェイクドキュメンタリー方式になっています。公開までその内容は一切分からず、明らかになっていたのは上の破壊された自由の女神像のビジュアルイメージだけ。

さらには偽の事故映像や架空の企業のホームページがネットに流され、かなりのこだわりをもって世界観が作られていました。

 

 

 

POVブーム到来以前の作品ながら、そのクオリティは数あるPOV映画を今なお押さえて圧倒的なスケールを見せています。画面の動き、パニックシーンの映し方、臨場感、全てが神憑っています。得体の知れない化け物が頭のすぐ上にいる恐怖や、混乱した街中を走る不安感、何も情報がない心細さ。ここまで緊張感のあるPOV映画は他にどれだけあることやら。

 

全編通して、事故映像を間近に捉えた一般市民の撮影動画のような生々しい迫力があります。あまりにもよくできたパニック描写は9.11の動画資料を参考にしたんだろうな、と思える絵面が多かったように思えました。

 

 

 

そしてPOVの定石がまだなかった時代の映画なんだなあ、と思える場面もあります。

「いつまでカメラを回してる気だ!撮影なんかしてる場合じゃないだろう!」「何が起きているか伝えないといけないんだ!カメラは置かないぞ!」みたいな今では定番のやり取りが作中ほぼないんですよね。友人のパーティーでカメラ係を務めることになっただけのきっかけから、決してカメラを手放さず状況をナイスアングルで撮り続ける青年ハッドの根性に頭が下がります。僕らが映画を楽しめるのは彼のおかげです。

 

それにしてもなんでこいつはこんなにもカメラ回しが上手いのか。素人とは思えない腕です。目の前に怪物、後ろからは米軍の大攻勢で爆発や銃撃や建物崩壊のオンパレードになっている状況ですら的確にモンスターを見上げるアングル、米軍をかっこよく映すナイスショット、自分たちの立ち位置を分かりやすく、と観客に優しい画面をくれます。ブレブレで何が起きているか分からないなんちゃってPOVは見習ってほしいですね。

 

 

 

文句なしに面白いです。POV映画としては100点満点の作品です。これに並ぶPOV映画は数える程しかないのではないでしょうか。

 

タイトルを同じくする映画「10 クローバーフィールド・レーン」もありますが、ストーリーの直接的なつながりはありません。「精神的続編」ということらしいですが、わずかに世界観もつながっていたりして今後どういう展開が待っているのか見ものです。