堕落ディザイアー

ずっと家でゴロゴロしながら映画を観ていたい

見えないけれどそこにいる 『マンイーター』感想

マンイーター (アンレイテッド・バージョン) (字幕版)

 

オーストラリアのワニパニックアクション映画です。

 

大河を進むクルーズ船が通常の航路を外れて未知の支流に入ったことから巨大ワニに襲われ、浸水しながらもなんとか河の中に浮かぶ小島に乗り上げて何を逃れます。しかしその小島は、満潮時には水の底に沈んでしまう場所でした。満潮のタイムリミットが迫る中、クルーズ船の乗客十数人は生き残るためなんとか河の岸まで渡ろうとするのですが……というお話。

 

メインキャストにはラダ・ミッチェル(「サイレント・ヒル」の主演)やマイケル・ヴァルダン(「エイリアス」のレギュラーキャラクター)など意外な豪華キャストが並び、低予算映画ながら堅実な作りでしっかりと怖がらせてくれる良作パニック映画です。

 

後に「アバター」や「タイタンの戦い」で主演を務めるけど当時はまだ無名だったサム・ワーシントンが微妙な役どころで登場するのも見どころポイントです。

 

 

 

低予算モンスターパニック映画のお約束といえば「予算の都合上なかなか姿を現さない敵」というのがありますが、この『マンイーター』はそんなモンスター映画のお約束を逆手にとって上手く魅せてくれます。

 

確かにこの映画でワニはとことん姿を見せません。はっきりと画面に登場するのは後半の襲撃シーンとクライマックスの対決シーンくらいでしょう。

 

しかし、それまでの見せ方が上手いのなんの。全く現れないのに、じわじわと確実に恐怖を煽ってきます。

 

作中でのこのワニの襲撃は、クルーズ用のそれなりに大きな船を底から突いてくることから始まります。この最初のひと突きがでかいのなんの。十数人の人間を乗せたクルーズ船が一瞬持ち上がります。

 

この時点でワニはしっぽの先すら見せてないのに、「こいつはやべえ」とまず観客は思ってしまいます。

 

その後の襲撃も、さっきまで水辺にいたおっさんが、ふと背を向けて振り返るとそこにいない……水面には水中に続くようなうねりが……みたいなじわりと冷や汗の出るような怖さを見せてきます。

 

 

 

そうやって溜めて溜めて、ついにワニがもろに飛び出してきて生存者の1人に食らいつくシーンの衝撃たるや。それまで数十分かけて煽ってきた恐怖が遂に目の前に、視覚できる形で現れます。

 

明るめのシーンではっきり映るワニは若干のCGっぽさもあるものの、それまでに溜めた恐怖ゲージが一気に放出された補正も相まってチープさは微塵も感じさせません。ただただ怖い。チビる。

 

 

 

そしてよくよく振り返ってみると犠牲者が野郎ばっかりなのが切ない。おっさんは死んでもいいのか。女性や子どもや犬が死ぬのは可哀想だけどおっさんはいいのか。

 

 

 

そんなちょっと悲しい事実に気づきつつクライマックスへと向かうワニとの戦いですが、この終盤の死闘が本当に凄い。動物パニック映画の歴史に残る白熱の戦いです。

 

まずなんといっても泥臭い。痛いし淡々としてるし爽快感なんて微塵もありません。ただただ現実的に生々しく、ヒトとワニという2種類の生き物が生存を懸けて血まみれ・泥まみれの殺し合いを繰り広げる様が描かれます。

 

そこで出てくるワニがもうね、こっわい。無理。

 

暗めのシーンなのでさっきの襲撃シーンのようにワニの質感が気になることもなく、ただただその恐怖だけがはつらつと襲ってきます。目の前には10m以上の巨大ワニ。こちらには銃はおろか刃物すら無し。手ぶら。どうしろと。

 

そんな絶望的な状況に知的生物としてひらめきを駆使して戦う様は泥臭さ満点ながら最高に燃えます。この終盤の戦いが僕の中でのこの映画を良作から傑作へと押し上げています。

 

低予算を感じさせない、おふざけ無しのガチガチのモンスターアクションの傑作です。最近のB級モンスターパニックはコメディ路線のものが豊富ですが(「メガ・シャークVSギガント・ゲイターとかね)、この『マンイーター』は久しぶりに「ワニって怖いんだな……」と嫌というほど実感させてくれる映画でした。