堕落ディザイアー

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幸せとは受け入れること? 『パッセンジャー』感想(ネタバレあり)

パッセンジャー (字幕版)

 

2017年公開のSFラブロマンス?映画です。

 

舞台は遠い遠い惑星へと120年かけて向かう移民船。船には5000人の乗客と200人のクルーが乗っていて、彼らは冬眠カプセルの中で老いることもなく眠りながらオートパイロット(自動操縦)で移民先へと運ばれていきます。

 

しかし、地球を出発してから30年後、巨大な小惑星が船体に直撃した衝撃で1台の冬眠カプセルが誤作動を起こし、その中で眠っていた乗客が目を覚ましてしまいます。それが、主人公のジムでした。

 

主演としてジムを演じるのはクリス・プラット。『ジュラシック・ワールド』のイケメンマッチョな主人公を演じた人ですね。本作では打って変わって、顔はいいけどどこか少し頼りなくてウジウジした兄ちゃんを演じています。

 

 

 

1人だけ90年も早く目覚めてしまい、もう冬眠状態に戻ることもできなくなった彼が絶望的な一人暮らしを始めることから物語は始まります。

 

話し相手はアンドロイドのバーテンダーのみ。この先自分はずっと一人ぼっち。友達も恋人も家族も作ることなく、ただただ船内の物資(何せ5000人分あります)を消費して生きていくだけ……そんな状況になったら、誰もが孤独に耐えられなくなってしまうでしょう。おそらくほとんどの人が、寿命を全うすることなく途中で自ら命を絶ってしまうでしょうね。

 

作中でジムもそのそぶりを見せます。たった1人で丸々1年も暮らし、船内の娯楽室でひたすら長い暇を潰すことにも飽きて自殺未遂をし始めた頃、彼は冬眠ポッド越しに1人の女性と出会います。それが、ジェニファー・ローレンス演じるヒロイン、オーロラでした。

 

 

 

オーロラに一目惚れしたジムは乗客のデータベースで彼女のプロフィールや映像を見て、恋心を募らせていきます。次第に彼女に心を囚われて、話したい、触れたい、一緒にいてほしい……と願うあまり、

 

オーロラの冬眠ポッドを意図的に開けてしまいます。

 

許されないですよね。そんなことをすれば彼女まで「船内で一生を過ごす」不幸の仲間入りです。

 

というか、こんな重要なストーリーが予告編で全く言われていないことが衝撃です。悲劇の男女の物語かと思ったらジム、おいジム。

 

とはいえ気持ちは分かります。長い間これ以上ない孤独を味わって、もう終わりにしよう、と全て諦めかけたところで突然の生きる希望として一目惚れしてしまったんですからね。

 

 

 

そこから始まる、(ジムが)最高に罪悪感を引きずる2人だけの生活がまたなんともいえません。

 

絶望感に苛まれながらも、少しずつ惹かれ合って、少しずつ幸せを見つけていく2人。誰もいない宇宙船内という奇妙な空間でくり広げられる究極的に自己完結型の恋は、最高に羨ましくない状況なはずなのに幸せそうにすら映ります。

 

本当なら植民への希望も全て絶たれて、ただ船内で何十年もの暇を潰しながら生きるだけ、という地獄のような人生を送るはずだったはずなのに、「愛する人と一緒に好きなときに好きなものを好きなだけ食べ、労働も苦労もなくゲームや映画、お酒を楽しみ続ける」という天国にすら思えます。

 

そしてそんな天国がいつまでも続かないのは予想通りですよね。

 

 

 

後半の展開はまあ想定内というか、SF映画の定番を一通りなぞりました。という感じです。決してつまらないことはなく、上手に定石を踏みながらハラハラドキドキや胸キュンを描いてくれます。

 

そしてエンディング。まあハッピーエンドです。「解決しない現実を受け入れて生きていく」という終わり方は、ハリウッド映画では珍しい気がします。

 

結局、避けられない現実を前に足掻くより、それを受け入れてその範囲内で満足できるように最善を尽くすのが一番「幸せ」になれるってことなのかな、と思わせられる結末でした。

 

「諦め」というと聞こえは悪いかもしれませんが……どう言うとかっこいいのかな。「受容」でしょうか。

 

エンディングでオーロラが書き残していた手記の言葉がこの映画のテーマを表しているようで印象的でした。移民先には決して辿り着けない、ただ船内で寿命まで生き続けるだけの人生でも、それを自分の「人生」として精一杯楽しんで生きた。そう胸を張って綴られているのが良かったですね。

 

幸せとは「受け入れる」ことなんでしょうか。それは「諦め」かもしれませんが、確かに人間を最善の幸せへと導いてくれる「救い」になるんでしょうね。