堕落ディザイアー

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ニール・ブロムカンプはスラムがお好き

個性派映画監督・脚本家として人気を集めているニール・ブロムカンプ。彼のこれまでの作品を観ていると、決まってその中には「スラム街」が風景として登場します。

 

その監督作を、舞台設定や背景に注目しながら振り返ります。

 

1.第9地区

第9地区 (吹替版)

まずはブロムカンプの出世作となったSF映画第9地区から。南アフリカにUFOが不時着し、故郷に帰れなくなった大量のエイリアンたちが難民として地球で暮らすことになった世界が描かれます。

 

エイリアンが「迫害される難民」という弱い立場で描かれた珍しい作品です。詳しい感想はこちら↓

www.daraku-desire.com

 

作中でエイリアンたちが暮らす居住区にはゴミの山があふれ、彼らの住居も廃材を繋ぎ合わせたボロボロの掘建て小屋です。その様はまさにスラム街そのもので、とても映画のための作り物とは思えない質感・生活感に溢れています。

 

そこで暮らすエビ人間のような見た目のエイリアンたちは宇宙船を操れるような知識層が全滅し「働きアリ」のようなポジションの個体だけが残ったので、ごみの山を漁って遊んだり地元民から食料を買うときにぼったくられていたり何故かブラジャーを付けてみてそのまま歩いているやつがいたりと妙に愛くるしいです。

 

そんなエイリアンたちのごった煮の感じが溢れる暮らしも合わせて「スラム」というリアルな空気感を持った背景が描写されています。

 

第9地区 (吹替版)
ニール・ブロムカンプ, テリー・タッチェル, ピーター・ジャクソン, キャロリン・カニンガム

 

 2.エリジウム

エリジウム (吹替版)

続く監督作エリジウムでも、スラムが舞台として登場します。

 

地球の環境汚染が進んで、宇宙ステーションに暮らす富裕層と死にかけの地球で暮らす貧困層に人類が分かれた近未来を舞台に、貧困層出身の主人公がその不平等なシステムをぶち壊すために戦う様が描かれるこの作品。

 

評価は「悪くはないけど良くもない」くらいの感じで正直言って僕も特別面白いとは思えませんでしたが、地球のスラム街の描写を見た瞬間に「ああ、第9地区に帰ってきた」と思いました。 

 

作品自体はやたらとスケールの小ささが目立ったりと気になる部分もありましたが、ごたごたしたスラムの風景だけは一品です。近未来のスラムということで、レトロで昔ながらの技術と未来のハイテクが入り交じった描写が更にごった煮感を増してくれていました。

 

弾丸や付け加えのパーツが強化されながらまだ使われているAK-47の描写なんかが最高です。スラムのギャングといえばこの銃、って感じの名銃が100年後にもまだ現役で、しかも進化して戦闘ロボットすら倒せるレベルに改造されているのが笑えます。

 

エリジウム (吹替版)
Neill Blomkamp, Bill Block, Simon Kinberg

 

3.チャッピー

チャッピー  CHAPPIE (吹替版)

異色のロボット映画「チャッピー」は、「第9地区」に続くブロムカンプ監督の新たなヒット作として話題になりました。

 

南アフリカヨハネスブルクを舞台に、警察ロボットが活躍するようになった近未来が描かれるこの映画。完全な人工知能を持って生まれたロボット「チャッピー」がひょんなことからスラムのギャングに誘拐され、彼らの中でかなりアグレッシブな教育を受けながら成長していく様子がコミカルに描かれます。

 

この映画でもやっぱり舞台になるのは「スラム街」で、ブロムカンプのスラム愛が表れています。

 

知能的にはまだ幼児レベルのチャッピーがギャング用語(強盗の脅し文句)を教わりながら育ち、自分がやっていることの意味もよく分からないまま車強盗を手伝わされている描写はコミカルで笑える一方で、なかなか闇が深い光景でもあります。

 

人間の目論みに翻弄されながら生きていくチャッピーの描写、特に終盤の展開は感涙必至です。そして「親」としてチャッピーを育てていくギャングたちがまた人間臭くて、悪い奴らなのに何故か憎めません。

 

このギャングたちのように、そこで暮らす人間のリアルさもしっかり描写されているからこそ「スラム街」という舞台の質感がより説得力をもって映ります。

 

 

まとめ

ニール・ブロムカンプの監督作に「スラム」が印象的なものとして出てくるのは、彼の出身が南アフリカ共和国だということも関係が大いにあるんだと思います。

 

彼の描くスラム描写はアメリカやヨーロッパのそれとはまた少しテイストが違っていて、いわゆる「アフリカの貧困地域の街並み」といった雰囲気です。

 

彼の描くスラムはどれも活き活きとしていて、ただの作品の一背景ではなく息づかいのある暮らしの場としてのリアリティを持っています。きっと彼自身もこんな「人が毎日を過ごしながら生きているスラム街」を見た経験があるんでしょう。

 

そんなニール・ブロムカンプは最近「第9地区」の続編製作に着手しはじめたというニュースが出ていて、いかにも続編ありげに終わりながらもう8年もファンを放置していたこの作品がやっと動くのか、と期待が持たれます。