堕落ディザイアー

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殺人鬼と泥棒のダブルブッキング 『ワナオトコ』感想

ワナオトコ [DVD]

 

盗みに入った屋敷で殺人鬼とダブルブッキングしてしまった泥棒が、『ソウ』シリーズみたいなトラップだらけの屋敷から脱出を図るお話です。

 

金庫破りの主人公アーキンを演じるのはジョシュ・スチュワート。くたびれてる系イケメンで、なんとなく『ウォーキング・デッド』のリックを彷彿とさせます。そんな体格がいいわけでも迫力があるわけでもないですが、裏の世界で生きている犯罪者だからかトラップ屋敷と殺人鬼に出くわしてもやたらと冷静に戦います。

 

このアーキンがけっこういいキャラです。侵入した理由は泥棒のためですが、そこで殺人鬼に捕まっている家族を助けるために勇敢に戦ってくれます。脱出できたにも関わらず屋敷に取り残された女の子を助けるために戻るなど行動のひとつひとつがイケメンです。さらに逃げ回るだけでなく、わりと殺し返す気マンマンで殺人鬼に積極的に攻撃も仕掛ける男らしさ。

 

敵の殺人鬼は目出し帽のようなフルフェイスの厚手のマスクをつけた男。「犬神家」のスケキヨさんを黒くしたみたいな奴です。この男が、たかだか数時間でどうやってこんなにリフォームしたんだと突っ込みたくなる数の罠を屋敷中に張り巡らせます。一歩進めば罠に出くわすほどの密度でトラップハウスが完成している様はまるで出張ジグソウです。

 

この罠がやたら痛そうなブービートラップだらけなんですね。皮膚に釣り針をひっかけて体をつるし上げてきたり、大量のトラバサミで全身を挟まれたり、大量の刃物を下向きにくくりつけたシャンデリアが降ってきたり……

 

窓から逃げようとしてトラップのギロチンで真っ二つにされた猫ちゃんはかわいそうでした。

 

そして仕掛けた張本人のワナオトコもまた容赦ない。屋敷に住む一家のうち特にお父さんお母さんが手酷く痛めつけられます。これが針やらナイフやらをふんだんに使ってきつそうなんですよねえ……さらに終盤は自らショットガンをぶっ放しながらシェパード犬をけしかけ直接的に主人公を狩りにきます。

 

それらの露骨に痛そうな拷問はもちろんですが、個人的にかな~り嫌だったのがゴキブリ攻めです。アーキンがゴキブリ(でかいアメリカンサイズのやつ)の入った瓶の口を体に押し付けられて、ワナオトコが瓶の底の方を火で炙ります。するとゴキブリたちが熱から逃げるように瓶の口に集まり、逃げ口を塞ぐ肉の壁(アーキンの皮膚)を開けようと齧り付いてきてうわああ……

 

よくこんなネタ思いつくもんです。なんて悪趣味な。

 

さらにこいつ、正体も一切明かされず、それどころか顔すら見えず、しかも終始ほぼ無言です。きっもちわるいです。いいキャラクターをした印象的な殺人鬼でした。

 

内容は超ベタな殺人鬼ものホラーで、映像の画質からは低予算感が漂ってきます。が、他のB級ホラーと比べるとえらく洗練されてるような感じがしました。と思ったらこの映画の監督、『ソウ』シリーズ後編(ソウ4~ソウ・ザ・ファイナル)を手掛けた人なんですね。痛そうな映画を作る大ベテランでした。そりゃ安定して面白いわけだ。

 

この手の映画の経験が豊富で大作を手掛けたからか、まずカメラワークが秀逸です。特に、ワナオトコさんに見つかる前のアーキンが屋敷内をばれないよう音を立てずに逃げ回るシーンが秀逸でした。二人の位置関係がとても分かりやすく、ワナオトコの死角を抜けてアーキンが動き回る様は見ていてハラハラさせられます。「今振り向かれたらバレる、頼むこっちを向くなワナオトコ」と念じながら見守らされます。ほかにも、救急車が横転するシーンで視点の軸は回らずに道具や救命士が洗濯機のように車内を転がる演出は独特で面白い画でした。

 

独特だけど安定したカメラワークに加え、画質の悪さもうまく錆っぽくドロドロした画面を演出しているので低予算ながら安っぽさを感じさせません。

 

いい感じに後味悪いバッドエンドな終わり方も嫌な余韻を残してくれます。そしてエンドロールではやたらと細かいキャスト紹介が見られます。ほぼエキストラレベルの人まで登場カットと役者名のクレジットが流れます。出演者に優しい映画です。

 

日本ではホラー映画ファンの間で隠れた良作としてわりと話題になった本作ですが、本国でもウケが良かったのか続編が作られています。そっちのレビューもいずれ。