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ちょっとお下品な大人版「E.T.」 『宇宙人ポール』感想

宇宙人ポール (字幕版)

イギリス・アメリカ合作のSFコメディ映画です。

 

主人公はイギリスからコミコンに参加するためにアメリカへとやってきた2人のSFオタク。「エリア51」を中心としたUFO・エイリアン関係の都市伝説の聖地を巡っていた彼らは、ひょんなことから「ポール」と名乗る本物のエイリアンと遭遇します。

 

見た目こそいかにもエイリアンなものの、煙草を吸いお酒を飲み下品なジョークを連発するいかにも「アメリカのオヤジ」なポールと徐々に打ち解け、彼らはポールが故郷の星に帰るための迎えがくる合流地点へと一緒に向かうことに。

 

しかしその道中には様々なトラブルが待ち構え、おまけに政府施設を脱走してきたポールには追っ手が迫ってきて……というお話。

 

 

 

オタクのおっさん2人がおっさんエイリアンと遭遇するという、まさに「おっさん版『E.T.』」と呼ぶにふさわしい映画です。

 

このポールのキャラが秀逸すぎて、彼のキャラクターだけでこの映画を名作コメディに仕上げています。あまりにも人間くさすぎて、CGで描かれるキャラクターながら主人公2人の存在感を食う勢いで人間味のある奴です。

 

なにせ地球にやってきた時点で自分でUFOを操縦するくらいの大人で、さらにそこから政府に60年も監禁されて技術や知識の提供をしていたというから、主人公の2人よりも余裕で人生の先輩です。「酸いも甘いも経験した大人」感がひしひしと漂っています。

 

政府機関の追っ手に追われていて、もし捕まったら解剖されるというけっこうなピンチなのに妙に余裕のある立ち振る舞いが印象的です。

 

 

 

このポールと主人公のオタクコンビ・グレアムとクライヴ、そしてポールと出会ったことでカトリック原理主義を捨てて科学主義に鞍替えした女性・ルースの4人が珍道中をくり広げるロードムービー風のこの作品。

 

メインキャラクターの彼らや追ってくる政府機関のエージェント、娘ルースを取り返そうとショットガン片手に追ってくる原理主義者のパパ、その他諸々の登場人物に至るまで、もれなく全員どこか憎めないキャラばっかりです。

 

一応真剣な追跡劇、命のやり取りをしているはずなのに全員いまいち緊張感がなく、終始ゆる〜い雰囲気が漂っています。唯一本当に強くて恐そうな追っ手・ゾイル捜査官もマトリックス」にでも出てきそうなシリアスで非情な雰囲気が明らかに浮いていて、一周回って笑えます。

 

 

 

ポールと人間たちの埒のあかないやりとり、時折挟まれる爆笑ポイントと絶え間なく畳み掛けてくる「クスッ」と笑えるポイント、そして過剰な下ネタと、とにかくいちいち笑えるところが多い映画です。

 

SF好きなら思わずにやっとしてしまう細かいネタも色々なところに仕込まれていて、SF映画オタク心をくすぐります。作品全体のテイストはもろにE.T.を思わせるところが多くて、それもそのはず、「E.T.」のアイデアはポールからスピルバーグに提供されたという設定が語られます。

 

スティーブン・スピルバーグ本人がカメオ出演でポールと電話越しに会話するシーンまであって、あまりにも予想外な出演でビビるしこの映画の「E.T.」愛が感じられました。

 

終盤にはサプライズ的にシガニー・ウィーバーがラスボスとして登場してきて、かつて「エイリアン」と死闘をくり広げたおばさんがE.T.に◯◯◯るというまさかの展開は不謹慎ながら唐突すぎて爆笑必至です。

 

 

 

イギリス映画界を代表する名コメディ俳優として有名な主演のサイモン・ペッグニック・フロストですが、SFオタクの役があまりにもどんぴしゃにハマっていました。これほどまでに冴えないおっさんが似合うコンビもそうそういないのではないでしょうか。

 

ここに監督としてエドガー・ライトが加わればイギリスコメディ界屈指の有名トリオが出来上がりますが、今回は別の監督です。名作アメリカンコメディ「スーパーバッド 童貞ウォーズ」を撮ったグレッグ・モットーラがメガホンをとっています。

 

エドガー・ライト的な超テンポのいい作風とはまた違った、頭のネジが緩み気味なゆる〜い雰囲気でサイモン/ニックのコンビが見られる貴重な映画ですね。

 

他のキャストも地味にコメディ界で大物になりつつあるジェイソン・ベイトマン、ポールの声にはコメディの帝王セス・ローゲン、そしてまさかのシガニー・ウィーバーなどやたらめったらに豪華な顔ぶれです。

 

 

 

様々な有名エイリアン映画へのオマージュが感じられて、テンポよく進む珍道中には終始笑わされっぱなしになります。

 

それでいてストーリーは笑いもたくさんで最後には感動もあり、登場人物たちの成長までちゃんと描かれる王道のロードムービー・コメディです。ただし笑わせ方にはブラックジョークっぽいものも多く、あとやたらと露骨な下ネタが多めなので、そういうのが苦手な人はちょっと注意が必要かな。

 

派手さはないながらも、洋画好き、エイリアンものが好きな人ならまず間違いなく楽しめるんじゃないかな、と思える良作SFコメディ映画でした。ほどよく笑えるゆるくて軽いエイリアン映画が見たい人には、自信をもっておすすめできます。

 

宇宙人ポール (字幕版)