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爆発シーンの恐ろしさに尽きる 『キングダム/見えざる敵』感想

キングダム/見えざる敵 [DVD]

 

実際に起きた事件をモチーフに製作された、イスラム過激派による爆破テロとその捜査を描く映画です。

 

舞台はサウジアラビアの首都リヤド。石油会社の社員であるアメリカ人たちの居住区で、大規模な爆破テロが発生します。犠牲者100人以上という悲惨なテロの首謀者を突き止めるためリヤドに派遣されたFBIのチームが、政治的なしがらみに翻弄されながらも事件の真相に迫っていきます。

 

主演はジェイミー・フォックス。いつも冷静でタフなFBI捜査官を演じています。捜査チームのメンバー役には「エイリアス」の主役で有名なジェニファー・ガーナー、「アダプテーション」のクリス・クーパー、コメディ俳優として有名なジェイソン・ベイトマンが並んでいて、特に笑える映画ばかり出てるジェイソン・ベイトマンが真剣な演技をしているのが印象的でした。

 

 

 

この映画で一番印象的なのは、なんといっても序盤の爆破テロのシーンです。リヤドに在留するアメリカ人たちの居住区で、ごく普通の一般人たちを狙った銃乱射&自爆、そしてその救助のために集まった人々を狙う2度目の自爆という2段階で展開されるこのテロですが、その爆発のあまりの凄まじさはトラウマ必至です。

 

特に2度目の爆発はもはやどん引きするレベルの凄さで、これまで映画で観た爆発の中で一番恐ろしい爆発シーンでした。観ていて背筋がスッと寒くなるほどの恐さです。

 

映像として見せ方にこだわったフィクションだからこそ、ある意味でニュース映像などのノンフィクションのものよりもダイレクトに恐ろしく見えました。

 

 

 

そんなトラウマレベルの爆破テロ描写のあとには、FBIのチームによる捜査が展開されます。爆破テロの犠牲者には現地のFBI捜査官もいたこともあり、チームにとっては弔い合戦の意味もあります。

 

自国のことを引っ掻き回されたくないサウジアラビア、下手に動いて世論の反感を買いたくないアメリカ政府などの口出しもあり、最初は証拠品に触ることすら許されない不自由な捜査が続きます。「万能で何でもできる捜査機関」なイメージが強いFBIですが、実際は政治的なしがらみに縛られたごく普通のお役所のひとつでしかないんだ、と実感できるストーリー展開です。

 

実行グループを突き止めるまでの流れには特別にどんでん返しなどがあるわけでもなく、堅実な捜査で淡々と犯人解明が進みます。そんな捜査過程には、かえって現実味が感じられました。

 

捜査の流れよりもむしろ、その過程で描かれる社会情勢や人々の心情表現の方が印象的でした。

 

アメリカ人たちに反感を持つ現地の人々、そして自分たちを守ってくれるはずのサウジアラビア警察に不信感を抱くアメリカ人たち。複雑に絡み合った現地の構図には、利益や宗教の問題が混ざり合って一筋縄ではいかない世界の構図が凝縮されているようでした。

 

 

 

そして終盤の戦いがまた恐いのなんの。現実の戦争さながらのリアルな銃撃戦もすごい迫力ですが、それよりも過激派に拉致された捜査官のひとり、レビットの方の描写が記憶に残ります。

 

拉致されてビデオカメラの前に座らされて、犯行声明を読むテロリストに斬首されるってこんな感じなのか…と思わされる生々しい展開が恐怖です。

 

 

 

さらに最後の結末がものすごくやるせなくて、戦争がなくならない現実が簡潔に分かりやすく表現されていて秀逸でした。この映画で描かれる、敵も味方もお互い自分が正義だと思っている戦いも大きな負の連鎖の一部でしかないんだと思い知らされます。

 

ひとつのテロ事件とその捜査過程のなかに、宗教戦争や社会情勢の現実が詰まった傑作です。社会科の授業で観せていいレベルだと思います。

 

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