堕落ディザイアー

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礼儀正しいジャパニーズ文明崩壊 『サバイバルファミリー』感想

サバイバルファミリー

邦画としては珍しく本格的な「文明崩壊もの」の映画です。電気が消滅した世界で、安全と思われる妻の実家のある鹿児島の田舎を目指す一家のサバイバルが描かれます。

 

主人公の鈴木一家はサラリーマンの父を小日向文世さん、専業主婦の母を深津絵里さん、大学生の長男を朝ドラ「ひよっこ」への出演で話題になった泉澤祐希くん、高校生の長女を朝ドラ「わろてんか」で主演を務めてる葵わかなちゃんが演じています。

 

ある日突然全ての電気が止まってしまったところから始まる本作。詳しい原因は作中でも明らかになりませんが、車なんかも含む全ての電気製品が止まったことから「太陽フレア」なんかが理由なんでしょうか。

 

電気が止まったことでインフラ施設も全てストップするので、当然ガスも水道も止まります。そうなると後は物資を消費しながら文明崩壊を待つだけになるのはどこの国でも同じですね。

 

鈴木一家も最初こそちょっと不便な日常生活を送ろうとしますが、次第に飲み水の確保すら難しくなります。そして、物資状況も衛生環境も悪くなっていく東京を脱出して、唯一逃げられる田舎である妻の実家の鹿児島を目指すことになります。

 

 

 

電気が止まった翌日、とりあえずパパが徒歩で出社すると他の皆もとりあえず出社してるところがいかにも日本です。オフィスビルの自動ドアが開かないので力ずくでこじ開けることになりますが、ちゃんと管理会社と破損責任の所在を確認しあってからドアをたたき壊すところもいかにも日本です。

 

そこまでは予想できましたが、電気が完全ストップして何の情報もない中でとりあえず数日は皆出社するところはさすがに予想外でした。でも日本だったらやりそうなんですよね。

 

スーパーなんかでも、ハリウッド映画なら暴動と略奪が起きそうな段階になっても皆ちゃんと列を作って支払いをしてるところがいかにも日本です。地震のあとの被災地の秩序維持が世界的に話題になりましたが、もし世界的に文明が崩壊してもマッドマックスみたいな世界になる順番は日本が最後なんじゃないでしょうか。

 

どんどん社会の状況が悪化していっても、なんやかんや最後まで無秩序みたいにはならないで終わる妙な礼儀正しさが「ジャパニーズ文明崩壊」って感じでした。

 

せいぜいが水のペットボトルを1本2000円とかで売るぼったくり商法が広まるくらいでしたが、そういう商魂溢れる店も略奪にあったりしないところがまた日本ですね。「食いもんと交換よ!」と言って在庫を売りさばく米屋のおばちゃんが印象的でした。

 

 

 

小日向さん演じるパパの役が妙に人間臭くて好きでした。家庭では口うるさい親父、会社では口うるさい管理職として周りの反感を買うダメなおじさん感がすごくリアルです。ネチネチした仕事人間で口調だけは偉そうなのにいざサバイバル世界になると息子家族の誰より何もできない残念さに中年の哀愁を感じました。

 

その点長男はスマホケースと接着剤で自転車のパンクを直してしまったり、妻は巧みな話術でぼったくり店から格安で水を買い占めたり、娘は「これ食べれそう!」といって閑散としたスーパーに手つかずで残されてたキャットフード缶の山を持ち出したりとそれぞれ柔軟でたくましいです。いざという時生き残れるのは既成概念にとらわれない人ですね。

 

文明崩壊サバイバルとはいえ、あまりハードな展開はありません。何せ舞台が日本だしね。それでも少しずつ日常が壊れてそれまでのルールが通用しなくなっていく様はちょっと怖くなりました。見慣れた日本社会でそんな崩壊がリアルに描かれてることもより不安を煽ります。大学生のころ体験した熊本地震を少し思い出しました。

 

力を合わせないと生きていけない状況で少しずつ鈴木一家が家族としてまとまっていくのも泣けます。それまで仕事にばかり夢中だったパパが初めて家族をまとめるリーダーになっていったり、反抗期真っただ中だった子どもたちが力を合わせて両親をサポートしていくようになる展開はベタだけどしんみり来ました。

 

 

 

「もし日本で社会が崩壊したら」という徹底的にリアルな描写が印象的な、日本ならではのサバイバル映画でした。日本人なら「分かる分かる」と誰もが共感しながら見れると思います。外国から見ても「日本っぽい」となるんでしょうか。

 

何気に豪華なキャストや映像面でも意外と凝った作りのわりにはあんまり話題になりませんでしたが、純粋にパニック(?)映画としてすごく面白かったです。